第1章 人・物の表現
第1節 名詞第2節 代名詞
第3節 限定詞
第1節 名詞
これは健爺の机の上ですが、この中にもいろいろなものがあります。
机の真ん中にはパソコンがあり、その左には電話機、本、付箋があります。右側には、パソコンのマウスやホッチキス、糊、眼鏡、電卓、ハサミ、いろいろなボールペン、シャープペン、消しゴム、USBメモリーとこんな小さな机の上でもいろいろなものがあります。世の中を見渡せば、気が遠くなるくらい多くのものがあり、その全部に名前が付けられています。
こんなにいっぱいあるものをすぐに全部覚えることなど誰だってできません。皆さんだって身の回りにあったものの中にも、名前を知らないものがあったと思いますが、それでも「これ」とか「何々するもの」とか言うことにより、その都度呼び名を教えてもらいながら過ごしてきたはずです。
それは英語でもおなじことですから、身近にある物だけとりあえず覚えてから、あとは興味を持ったものを、その都度覚えればいいのです。
周りの人に教えてもらうのと同じようなことは、テレビの英語番組で体験ができます。
またウェブサイトにも絵に描かれたものの名前を英語で教えてくれるものもあります。どちらも絵や写真と一緒に文字も教えてくれますが、今は文字を覚えようとする必要はありません。文字を覚えるのは英語がある程度分かってからでも遅くありません。
物の名前を知るには、健爺の若い頃は和英辞典で調べるしかありませんでしたが、今では機械に日本語で物の名前を伝え、機械にその英語名を教えてもらうという方法があります。
明石家さんまさんのテレビコマーシャルでお馴染みのポケトークのような翻訳機やスマートスピーカーそしてスマホのアプリなら声で教わることができます。また、今のところ声で伝えることはできないようなので手で入力する必要がありますが、パソコンの翻訳サイトでも同じようなことができます。
辞典で調べるのと違って、「音」で教えてくれるのが何といっても最大の魅力です。
たとえば日本語の「机」を英語で何というのか知りたいときには、健爺がいつも使っているgoogle翻訳のサイトで「机」を入力すればdeskと表示され発音もわかりますので簡単です。
このようにスマホやパソコンのアプリは、とても便利で英語を覚えるにも良いものですが、昔ながらの和英辞典にもスマホやパソコンのアプリには無い良さがあります。それは、細かいことまできちんとわかることです。
健爺が使っている和英辞典で、「机」を引くと、アプリではdeskであったものがa deskとでています。和英辞典では、日本語の「机」という一つの語が、aとdeskという二つの語にわかれています。このそれぞれの語のことを単語(たんご)といいます。
なぜ日本語では一つの語でいうものを、英語ではaとdeskという二つの語でいうのでしょうか。
英語の人・物のうち数えられる(決まった形のある)ものについては、一つのときは初めに一つを意味するaを示してからa deskと表します。つまり、「(一つの)机」と言わなくてはならないのです。一つではなく複数の時は、多くの場合sを付けてdesksと複数であることを表しますが、中にはsをつける以外に形の変わる名詞もあります。この複数を表す形を複数形(ふくすうけい)と言います。
複数形でないものは、人・物の基本形なので、スマホやパソコンのアプリでは基本形ででているのです。
そして「机」など数えられるものについては、この複数形が基本形よりも一般的な形で、aを付けるものはそれが一つしかない特殊な場合です。つまり、数えられるものについては複数形にして「(数えられるものである)机」と言っているのです。
「机」の一言ですましている私たちから見れば面倒くさいことですが、英語というのはそういう物の種類をはっきり示す言葉なのですからしかたがありません。
また、水や氷などの数えられない(決まった形のない)ものはそのままwater, iceと表します。
皆さんは冷蔵庫にある四角い氷の塊を思い浮かべて、「数えられる」と思ったかもしれませんが、数えられるものの例に挙げた机はバラバラに壊したら机ではありませんが、氷の塊は細かく砕いてもやはり氷です。これは机には決まった形があるのに氷にはそれが無いからです。
英語の名詞は単数・複数の区別など日本語と比べると面倒くさいですが、さらにもっと面倒なことがあります。これから先は、大人でもむずかしいので、今わからなくても当然ですので、そのつもりで読んでください。英語を知るうちにだんだんわかってきます。
それは、実際に目で見たり手でさわったりする「実体」と、それがどのようなものかという「考え」とをはっきり分けているということです。
基本形は、その「考え(概念)」を表しているのです。
つまり、その人・ものがどういうものであるかの「考え」があり、それをもとに実際に目で見たり手でさわったりする「実体」があるということです。
第2節 代名詞
英語には日本語にはない代名詞というものがあり、頭の中にすでに入っている物を表します。
代名詞は、日本語で言うところの、私、私たち、あなた(あなたたち)、彼、彼女、彼ら、それ、それら、にあたるもので、それぞれ主格(しゅかく)、所有格(しょゆうかく)、目的格(もくてきかく)という三つの形(これを格変化といいます)を持っています。
英語では、私とあなた以外のものを最初に口にするときは、「this PC(このパソコン)」のように、名詞を使って取り上げ、その後口にするときは、すでに頭の中に入っている物なので、itと代名詞を使って表します。
英語では、日本語で言う「私は」、「私が」を表すとき、「私の」を表すとき、「私を」を表すとき、日本語のように「は」、「が」、「の」、「を」を付けるのではなく、語の形が変わります。
主格とは、一人称を例に取ると、日本語で言う「私は」、「私が」を表すとき、所有格とは、「私の」を表すとき、目的格とは、「私を」を表すときに使います。
次にあげる例の、目的格の後の4番目に示したものがそれです。
代名詞所有格+名詞ではなく、名詞+名詞のときは、名詞に’sを付けHirose’s deskのように使います。
一人称 会話をするときの本人 | ||||
主 格 | 所有格 | 目的格 | 所有代名詞 | |
(は、が) | (の) | (を) | (のもの) | |
単 数 | I | my | me | mine |
複 数 | we | our | us | ours |
二人称 会話をするときの相手 | ||||
主 格 | 所有格 | 目的格 | 所有代名詞 | |
(は、が) | (の) | (を) | (のもの) | |
単数・複数 | you | your | you | yours |
三人称 会話をするときの当事者以外 | ||||
主 格 | 所有格 | 目的格 | 所有代名詞 | |
(は、が) | (の) | (を) | (のもの) | |
男性、単数 | he | his | him | his |
女性、単数 | she | her | her | hers |
単 数 | it | its | it | - |
複 数 | they | their | them | theirs |
代名詞でなく名前を直接使う場合 | ||||
主 格 | 所有格 | 目的格 | 所有代名詞 | |
(は、が) | (の) | (を) | (のもの) | |
名 前 | Hirose | Hirose's | Hirose | Hirose's |
最後に代名詞のitについて、大切なことに触れておきます。
一般に「ものを表す」とされるitには、「もの」以外に頭の中に浮かんだことを示す意味があります。
さきほど、私、あなた以外の人ものを最初に取り上げるときは、名詞を使いそのあと取り上げるときは代名詞を使う、といいましたが、頭の中に浮かんでいることもそのとき頭の中に入っているものなので、説明なしにitを使って表せるのです。
詳しくは「文」の説明をしてから取り上げますから、今は頭の片隅に入れておいていただくだけで結構です。
第3節 限定詞
「考え」というのは、piece(ピース:平和)のように実際に手で触ることのできないもののことです。手で触れられないのと同じようにpieceそのものは、目で見ることもできません。もし皆さんがのどかな田園風景を思い浮かべて、pieceを目に見ることができると考えたかもしれませんが、それは、のどかな田園風景から皆さんが感じていることであって、pieceそれ自体を見ているわけではありません。
ですが、「考え」でなく実際に目で見たり手でさわったりできる「実体」ということを言いたいときがあります。日本語ではどちらも区別なく使いますが、英語はそれを区別することばなのです。
つまり、「氷」を例にとると、日本語では「考え」を表すときも「実体」を表すときも「氷」ですが、英語では「考え」を表すときは、ice、「実体」を表すときは、the iceと表します。
iceの前にあるtheのような語を限定詞といいます。
ここで「考え(概念)」と「もの(実体)」というものがどういうものか、今一度整理しておきます。
「考え」とは、そのものがどういうものであるかを表すものです。
例えば「本」という言葉を聞いたとき頭に思い浮かべるもの、あるいは「本」というものがどういうものかと聞かれたときの説明、それが「考え」で、唐突ですが「考え」そのものには境界というものがありません。
とても分かりにくいのですが、一個のリンゴのように私たちが普段見たり触ったりしている「もの」にはそのリンゴが空間の中に占める境界というものを持っていて、私たちはその境界を見たり触れたりしてリンゴを認識します。私たちが頭の中にものを思い浮かべるときは実際に世の中にあるものを思い浮かべますので、思い浮かべたものには境界がありますが、「考え」そのものは、境界というものを持たないので実際に見たり触ったりすることはできません。
一方「実体」というのは、実際に世の中にあるもののことです。
「実体」は、私たちが暮らしている実際の空間の中に一定の境界というものを持っているので、私たちはそれを見たり触ったりできます。
限定詞は、境界というものを持たない無限に広がる「考え」に何らかの意味で限定をかけることにより境界を付けるものです。
空間的に境界を付けると実体を表し、時間的に境界を付けると時や期間を表し、考えに境界を付けると考えの中の一つの種類を表すことができます。
限定詞には次のようなものがあります。
冠詞
a, an(一つの、anは続く語が母音の場合)、the(それと決まってしまうもの)
指示詞
this(この)、that(その)、these(これらの)、those(それらの)
代名詞所有格
my(私の)、your(あなたの)、his(彼の)、her(彼女の)、their(彼らの)、its(それの)
限定を表す形容詞
some(或る)、any(一つでも)
限定詞の後に名詞を示すことで「考え」を「実体」に変えることができます。
例えば、theという限定詞にice(考え)を続けるとthe ice(もの)を表すことができます。
同じように、myという限定詞にmother(考え)を続けるとmy mother(もの・人)を表すことができます。
ここで冠詞のaについて補足しておきます。
数えられる名詞は、sやesを付けるなどして複数であることを表しますが、複数形の名詞は、複数形になった時点で、何らかの意味で限定された複数の「実体」、「時間」あるいは「種類」という意味を中に含む「考え」になり、aという限定詞はそれらの内の一つという「考え」を表します。
ですからそれらの考えを実体にしたいときは、theという冠詞を使い、複数の実体を表すときはthe applesのように表し、applesのどれにも当てはまる一つのものというan appleを実体にしたいときはaに替えてtheという冠詞を使いthe
appleというように表します。
英語の名詞には、日本語を使う私たち日本人が持っていない「考え」と「実体」という大きな区別があります。その感覚を身に着けるには、限定詞なしの名詞が来た時には「考えなんだな」と意識し、限定詞の後に名詞が来た時には「実体なんだな」と意識することを続けることです。面倒くさいと思われると思いますが、そうすれば1年もしないうちに自然に身に着けることができます。逆にこれをやらないと「絶対に」と言っていいほど身につけることが難しいのです。
第1項 英語の修飾の原則1 前から限定
英語では語を修飾するとき、限定詞のように前から修飾すると後ろの語の範囲を限定し、語の意味を変更します。
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